HIGH LINE -アート、市民、ボランティアが立ち上がるニューヨーク流都市再生の物語-
内容紹介
HIGH LINE-1930年から1980年までニューヨークマンハッタンのウェストサイドを縦断していた貨物列車。
ニューヨークの発展を支えたその高架車線は、廃線と共に老朽化と再開発を理由に解体されようとしていた。だが、ニューヨーク市民運動はあらゆる再開発計画を退け、ハイラインによる新たな街をつくる事を選択する。これがニューヨーク市民がだした街づくりの在り方だ。
「途方もない使命を背負った2人の一般人」。ぼくたちは、ハイラインの奇跡的な成功物語をつづったあるジャーナリストに、そう書かれたことがあった。
でも、まさにその通りなのだ。ぼくたちは、保存運動、建築、地域の取りまとめ、植物栽培、資金調達、行政との連携、公園の運営といったことのどれについても、ほとんど知らないまま、ハイラインの活動を始めてしまった。
しかし、専門知識を持っていなかったことこそがハイラインの成功のカギとなった。何もわからなかったので、人に頼らざるを得なかったのである。そういう人たちがぼくたちに肩入れし、指導し、わからないことを代行してくれたからこそ、ハイラインの計画が実現したのだ。
この本に登場する、ハイラインにかかわった人たち─何千人という地元住民の人たち、ボランティア、寄付者、設計チーム、行政関係者、フレンズ・オブ・ザ・ハイラインのスタッフ─のだれに聞いても、それぞれが、ぼくたちとは違った視点で、この実現しそうになかったプロジェクトに関するストーリーを語るはずだ。でも、どの話も、ぼくたちの話と同様、それなりに真実なのである。
この本はけっして完ぺきではない。大事な役割を果たしていながら名前が載っていない人もたくさんいるし、大事な出来事なのに言及されていないこともたくさんある。
でもハイラインを歩くと、ぼくたちは、公園のそこかしこに秘められたすべてのストーリーを思い起こすことができる。できれば、みんなにも、そうした隠れたストーリーを感じ取ってもらえたら、ハイラインにはたくさんの人たちの熱い思いがしみ込んでいることを感じ取ってもらえたらと思う。今日のハイラインは、その人たちの力の結集なのだ。
-本書まえがきより-
推薦文
早稲田大学 創造理工学部長・教授/日本都市計画学会 会長 後藤春彦
マンハッタンのウエストサイド。その空中を走る高架貨物鉄道の廃線跡をたどる人びとの流れは、都市景観のあらたな要素となった。ハイラインと呼ばれる古くて新しい都市公園の誕生に関わった多くの人びとのいくつものストーリーがここに紡がれている。
森美術館館長 南條史生
ニューヨークの高架鉄道の跡地を公園にする物語。二人の青年が、この大事業に献身的な努力をする。粘りと執着、そしてアイデアと人間への信頼。このチャレンジこそアートかもしれない。
ランドスケープ・デザイナー/studio-L代表/京都造形芸術大学教授/慶應義塾大学特別招聘教授 山崎 亮
ハイライン誕生の経緯は、コミュニティデザインのヒントに満ち溢れている。
著者 ジョシュア・デイヴィッド、ロバート・ハモンドについて
1999 年にフレンズ・オブ・ザ・ハイラインを共同設立する。デイヴィッドは、元雑誌のフリーランス・ライター兼編集者で、『グルメ』『フォーチュン』『トラベル+レジャー』『ウォールペーパー』などに寄稿していた。ハモンドは、ハイラインの活動前、さまざまな新興企業の起業に携わっていた。2009 年に、ローマで、アメリカン・アカデミー・ローマ賞を受賞。また、独学の芸術家でもある。2010 年、デイヴィッドとハモンド両氏のハイラインへの取り組みに対し、ロックフェラー財団がミュニシパル・アート・ソサエティーを通し、ニューヨーク市の都市デザインに著しい貢献をした者2 人に与えるジェーン・ジェイコブズ・メダルが贈られた。
訳者 和田美樹について
東京生まれ。1987年より米国ニュージャージー州在住。ニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザインで学んだ後、長年にわたり、輸出入販売会社に勤務。あらゆる実務を経験するうち、翻訳の魅力にとりつかれ、実務・出版・映像翻訳に携わるようになる。趣味は、インテリア・デザイン、いけばな、クロスストラングハープ演奏。
- 出版社:
- アメリカン・ブック&シネマ
- 著者:
- ジョシュア・デイヴィッド、ロバート・ハモンド、和田美樹(訳)、HIGH LINE(原著)
- ページ数:
- 420
- 発行年月:
- 2013/8/6
- ISBN:
- 978-4903825090